月の大きさ比べ と、バカの壁!?

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昨日は十六夜を見ながら帰宅した。みんなの日記を読んでたら、一昨日の満月は、スーパーウルトラエキストラメガハイパー......えーっとなんだ、まあそんなスッゲー月だったとみんなが日記に書いていた。そんなにスゴイことなのか? 最近と最遠なんか、毎月あると思ってたが。(^^; というわけで、大きさを比較してみた。とはいえワタクシ、満月の写真って個人的にはどうでもいいので(^^;;、ほとんど撮ってない。で、探したら2010年7月に撮っていたので距離を調べたら最遠っちゅーほどではないけど40万と4千kmくらい。ピクセル原寸で切り出して並べてみると、おおお、確かに違うなあ。もちろんどっちも同じ望遠鏡の直焦点、同じカメラである。秤動ちゅー動きのせいで、見える表面もちょっと違う。

そういえば「今宵の月 と、大きな怒り」というエントリーを書いたとき、月は上弦だった。あれから事態は好転しないばかりか、少しずつヤヤコシイことになりつつあるようだ。
あのエントリーでは、東電に対する日共の申し入れ書をひとつの傍証として東電の罪を書いたけど、実は東電が原発の脆弱性を指摘されたのは一度や二度ではない。件の申し入れの前年、予算委員会の分科会でこれまた日共の議員が追求して、原子力安全・保安院長は安全性に問題ないと突っぱねる一方で、原子力の安全の確保のために真剣に取り組む、と担当大臣が約束させられている。さらに報道されたソースを探せば、既に20年前、米NRCが非常用発電機にリスクがあると指摘していたとか、2008年12月にはIAEAまでが、安全規則が時代遅れで、このままでは強い地震が深刻な問題をもたらすと警告していたとか、東電や政府が福島原発の脆弱性を認識しながら、無為無策なのか、経済性優先なのか知らないが、とにかく放置してきた例証がなんぼでも出てくる。
極めつけは今度の原発事故への対応。産経の報道によれば「まず、安全措置として10キロ圏内の住民らを避難させる。真水では足りないだろうから海水を使ってでも炉内を冷却させることだ」という首相の意向に対し、東電は「(10キロの避難指示に対し)そこまでの心配は要らない」、海水の注入には「炉が使い物にならなくなる」と激しく抵抗。菅直人は一転、事態の推移を見守ることにした、というじゃないか。もう、なんちゅーか、やっぱりな、という感想しか出てこない。

で、インターネットってのは良くも悪くも公平だから、バカだって発言できちゃうのである。このblogはみなさんご存知のように、政治や宗教に関する意見とか、他人の言動についてはあんまり云々しないようにしてたわけだけど、今回は許さん。「今日のサザンビーチ とTwitter?」 というエントリーでも書いたけど、ちょっとあまりにもクソバカな発言が多過ぎるんじゃないのか。特に、"呼びかけ"系。知識もなく、ちょっと調べればわかることさえ調べず、根本的なことをなんにも理解できてないのに、なんで他人に対してモノを言おうと思うかなー。

まず、原発と原爆は違うんである。原発と原爆は、燃料のウランの濃度がまったく違うのだ。だから原発は最悪の場合にチェルノブイリのような水蒸気爆発はできても、核兵器のような核分裂による破壊的な爆発はできない。しかし逆に言えば原発の方が、事故の後の処理はより難しく、時間のかかるものになる可能性もある。チェルノブイリでは、被曝死した作業員の遺体を収容するのに、あと数世紀必要だと言われているくらいだ。その程度のことさえ知らず、みんなの恐怖を煽り立ててみたり、逆になんの根拠もなく安心だ政府を信じろと言ってたりするのが多いんである。

次に、天災と人災は違うんである。もちろん地震や津波そのものは、天災だ。誰でも知るように三陸はリアス式海岸(北部は隆起海岸)で過去津波被害が多く、そのためハザードマップも早くから整備され、危険なエリアには防潮堤が整備されていた。そこに、まさに"想定外"の規模の地震が起こり、5mとか7mとか、田老万里の長城に至っては高さ10mという観光名所になるほどに巨大だった防潮堤を津波が破壊して、町が襲われた。まさに、天災である。いやまあ、過去の津波の規模を考えると、それでも想定が低かったんじゃないのか、という行政への誹りもあるのかもしれないが、三陸海岸全域をもっともっと巨大な防潮堤で覆っていればここまでの被害はなかったはずだというのは、果たして現実的だったかどうか。
ところが福島の原発は、天災ではない。原発稼働から40年。その"想定"の低さを危険性を何度も指摘されながら放置し、そして現代の基準的には"想定内"の津波(報道では6mとも14mとも)だったにも関わらず、防潮堤を越えた波に敷地全域を洗われ、最低限のフェイルセーフさえ喪失した。
そもそも、絶対に事故を起こしてはならないのが原発なんである。東電社長は"揺れではなく、想定外の津波が非常用発電機にかかったから"事故になったとか言い逃れに終始したようだが、おいおい、東電webサイトには"過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認しています。また、発電所敷地の高さに余裕を持たせるなどの様々な安全対策を講じています"などと記載しているじゃないか。
実際には、自信たっぷりなwebサイトの記述と裏腹に、福島第1原発が想定していた津波はわずか5m。だから防潮堤は7mしかなかったんである。一方、シミュレーションなどするまでもなく、関東大震災で房総が喰らった津波は波高10m超、昭和三陸地震で28m超、そして奥尻島を襲った津波は波高30mであったことがわかっている。想定5mの、いったいどこが"過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波"なのか。ということで福島原発の事故は、人災以外のなにものでもないのだ。

次に、節電に協力し、計画停電に素直に従うことを、被災地への支援だと思ってる人も少なくないようだが、これも違う。いま、節電を強いられているのも、東電の好き勝手に電気を止められているのも、東電の原発事故を尻ぬぐいさせられているだけで、その分の電気が被災地に送られたり、復興支援に役立てられているわけではないのだ。

他にも、東電を批判するTweetに対して、現場で決死の作業をされている人のことを考えろみたいな、なんの関係もない寝ぼけた文句言うヤツとか、いまはとにかく信じて祈ろうみたいな思考停止Tweetとか、まあ、いろいろと思うことは山のようにあったわけだが、そんなこんなで今回の地震と原発事故に関する、もっともクソバカとわたしが認定するTweetは、3月14日に誰かのRTで流れてきた下記のものである。

「原子炉に海水をいれて冷却というのは、「原子炉を使い物にならなくしてでも安全を保証」という東電の英断。水素が爆発しても放射線は出ないが、技術者は負傷した。そこまでしなくてもいいことを、知識が無い国民も安心できるように技術者が体を張っている。我々がすべきは感謝。苦情や批判じゃない。」

他のTweetから察するに大学生か、あるいは院生か。ここまでなにもかもがクソバカだと、もうなんちゅーか、たぶん本気でそう思っているというより、一種の愉快犯なんだろうとは思うが、どっちにしてもこのクソバカ加減に、わたしはかなり暗澹たる気分に墜ちたのだった。

そういやバカの壁っちゅー新書がバカ売れしたことがあったなあ。正直、タイトルがすべて、とまで言ったら語弊があるけど、ちょっと思ったほどの内容のある本ではなかったような。それはともかく、バカの壁ってどんな津波も防いじゃいそうに高いなあ。