今宵の月 と、むかつく情報操作

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原発の事故に関して、怒りのエントリーを書いたときの写真も、上弦の月だった。そして今夜も上弦(19時12分で月齢7.8.上弦は21時05分である)。そう、もう一ヶ月もたったんだなあ。

あのころ、政府の発表や東電を擁護してた連中は、どこへ行っちゃったんだろう。政府の専門家を信じろ、他の意見は人心を惑わすデマだ、なんて言ってた連中は、御用学者とともに消えちゃった。東電の批判は現場の士気を下げるからやめろとかTweetしてた人。自分のツブヤキに、そんなすごい影響力があるとでも思ってたのかなあ。そもそも現場で、そんなつまらんTweet読んでないって。それに、そんなもんで下がるような士気してて、あんな最前線を戦えるもんか。

昨日も某所で、このblogで勉強しました、とか言っていただいたけど、このblogはあくまでもワタクシのチョー個人的な日記なんである。知ってる人は知ってるように、ワタクシ、物理だとか原子力工学とかの大学を出てるわけではない。みんなよりちょっと原発に詳しいことに理由があるとしたら、昔、ちょっと仕事で関わったときに、書く内容のバックボーンを知るためと、個人的にも興味があったのでいろいろ調べただけである。
とはいえいまや当時よりカンタンに、ありとあらゆるドキュメントを拾ってこられるこのインターネット時代。その気になればちょいちょいと情報を集めて取捨選択して総合させて、そしてうにゃうにゃと考えれば、誰でもわかることしか書いてない。
だからこそ、そんな誰でもわかるような情報さえ隠蔽する、あるいは言い換えるなら"本当のことを言わない"政府や東電、保安院や御用学者の発表や、それを大本営発表のように咀嚼も疑いもなく報道し続けるマスコミ、そして国家総動員体制の尻馬に乗って騒ぐ少年兵気取りのガキみたいなTweetなどに旗が立ち、そしてこんなバカみたいな事態を引き起こしちゃった政・財・官・学の原子力ムラのあれこれに腹が立ち続けたのだった。

もう、あのころ政府や東電が表向きに匂わせてたような、さっくり事態が解決しちゃうなんて望みはとっくに消え失せた。しかし大本営発表よりたちの悪い、ナチスのゲッベルスでもやってそうな情報操作も見られる。
たとえば昨日の朝日新聞朝刊。ど真ん中の見開きにドカーンと地震被害の一覧図が掲載されていた。各地を襲った津波の高さがあるんだけど、これも、ちょっと見ればオカシイと思うのがふつうじゃないのかなあ。震源に近いエリアは、そりゃ津波もデカイ。宮古の田老は19m、女川でも17.6mだ。しかし仙台あたりから南は10mを下回り、相馬で6.86m、いわき市四倉で5.9m、茨城に入ると6.2~3.77mと、まあ徐々に津波の大きさは小さくなっている。なーのーにー、なーぜーかー、相馬6.86mといわき市四倉5.9mの間にある福島第一原発だけが14m。海岸線も海底も、津波が増幅されるような地形ではない。これ、オカシイんちゃうのん。と、朝日の記者なりデスクが記事作ってて思わないなら、そいつにジャーナリストの資格はない。

実は、原発を洗った津波は、6~7m程度に過ぎなかったのではないか。現に地震直後の第一報では、読売が"激しい揺れで建物内の設備は壊れ、海岸沿いの施設は高さ6メートルの巨大津波によって根こそぎ流された"と報道している。他にも"高さ約6メートルに達する大波は、同原発沖合に設置された、幾重にもある防波堤をのみ込んでいった"ともある。そりゃそうだろう、想定5mのところにそれを超える津波が来たんだから、6mの津波だって想定外だ。この記事はさらに続ける。"1号機から6号機までの原発の周囲は、あっという間に水浸しになった。それぞれの原子炉建屋に隣接する発電施設に冷却水を供給しているポンプ設備が、次々と流されていく。この設備を失えば、発電施設内を通る高温の蒸気を冷却することができない。技術者は初めて見る光景に恐ろしさを感じ、「これは危険なことになる」と直感した"。つまりこりゃ目撃情報に基づく記事なんである。

これが、1号機が水素爆発したあたりから、いきなり津波の高さが倍以上になった。ついでに10kmしか離れてないのに倍以上違ったらバカでもオカシイと気付くからか、7mとか発表してた福島第2も14mになった。
では、実際に10m超の大津波を喰らったエリアはどうなったか。岩手や宮城などの、大津波を喰らったエリアはどこもかしこも、巨大だった防潮堤が破壊されたり、鉄筋コンクリートの建物さえ大きく損傷したりしている。しかし福島第1原発は敷地の表面こそ見事に洗い流されてはいるが、防潮堤などそのまま残っているし、海に最も近いタービン建屋などはキレイなままだ。そんな大津波に襲われたようには見えない。

でも、津波は、14m以上の高さでなければならなかったんである。

なんで津波が14mでないと困るのか。震源地に近い東北電力の女川原発が、13mの津波を喰らったのに、ちゃんと耐えて冷温停止したからである。他社がそんな巨大津波でも安全を守ったのに、自分とこがたった6mの津波でステーションブラックアウト(全電源遮断)したなんてとても言えないだろうし、人災イメージが強くなる。つまり、14mという波高は、きっとこの事故が大災害による不可抗力だと印象づけるための、東電の情報操作なんだろうな。そもそも14~15mだったという波高の数字自体が、東電の発表だし。ていうか、よくプレスリリースと別紙PDFを見れば波高なんて言葉は使っていない。"遡上高"だ。どこまで水が上ってきたか、ってことを、あたかも津波の高さのようにすり替えてるのかも......。

と、その程度の情報を集め、そう考えないヤツは、ジャーナリストではない。そしてクソバカな記事書いて新聞刷って恥さらしちゃう前に、その東電が発表した波高の根拠や真偽だとか、原発プラント設計時に想定していた波高の違いとか(女川原発は9mを想定)、地形の違いとか(女川原発はリアス南端の湾状)、いろいろ調べて真実を明らかにするのがジャーナリストの役目であり、社会の公器たる新聞の務めだ。
って、そりゃ無理か。いやそれどころか朝日は東電発表の"遡上高"を、"各地の津波の高さ"というタイトルで敢えてごっちゃにして他地域の波高と並べ、東電も被害者なんだという印象操作に一役買っている、と言えなくもない。ただの無知かもしれないけど、どっちにしろ、東電、新聞の大スポンサー様だしなあ。

というわけで、もちろんこれは、あくまでもわたしの憶測である。ほんとにたまたま、どういうわけかしらないが、東電の発電所だけを狙い撃ちするように、まるで震源至近のような大津波が来た可能性もある。どんなことの可能性だってゼロではない、とか、官房長官も言ってたしな。

それにしてもあれから一ヶ月。過酷事故、いわゆるメルトダウンを喰らいながら、現状レベルに押さえ込み続けられているのは、ホントにかなりすごいことだと思う。しかし、この先なんかあったら、これまでのなにもかもがパーである。どうせ被曝しても、蓄積して後々に問題になるほど余命があるわけでなし、つまらん情報操作なんぞしてるヒマがあるなら、社長も会長も自らタイベック着て現場で作業してこい。