ちょっと熱が下がってきた

テンテンテンテン……
ガチャポ
ギュワイィィイン
ガチャポ
ギュワイィィイン
なんだこの音は。ロータリーミッションのギアを蹴り込んで、自動遠心クラッチがつながり、加速していく音だな。家の前をソバ屋の出前でも走ってるのか。いや、ここ6階なんだが。しかもこのアイドル音は2ストかあ。んな化石、もう生き残ってないよな。
人生ではじめて乗ったバイクが、ヤマハのメイトだったなあ。高校の写真部の同級生だったY本君の家には、タバコに麻雀、バイクに漫画と、親なら高校生の息子からなにがあっても遠ざけたくなるようなモノがこれでもかとあふれていて、そんなわけで部員有志はいっつもいっつもY本君ちに入り浸ってたんである。くだんのヤマハメイトもY本君ちの仕事バイク。これにはじめて乗せてもらったとき、ワシは魂をバイクにギャワンと鷲掴みにされてしまったのだ。
校則ではもちろん禁止されていたバイクだけど、みんな乗ってたなあ。Y本君はCB500Fourを、M宅君はスズキのGT380を新車で買ってもらい、S水君は中古だったけどCB750Fourだった。M野君はちょっと変わったお兄ちゃんの影響があったのか原付からトレールから変な方向ばかり。それでもおそらく誰よりもバイクには詳しかった。S水君はおじさんにもらった、とか言ってて、誰かが中古だからあんなこと言うんだとか言ってたけど、ワシん家ではバイク絶対禁止だったので、んなもん中古とか新車とか、排気量の大小だとか、そんなこたーまったくもってどうでもいいことで、とにかく毎日毎日、自分のバイクが欲しくて欲しくてたまらない、ちょっとオカシな高校生だったのだ。まあ、結局は借りたり、買ったのを隠してたりして乗ってたわけだけど。
しかし、なんでこんな音が聞こえてきて、あのころのいろんなことを思い出すのかなあ。やっぱ熱のせいなんだろうなあ。