この空の、放射性物質の数値は確実に通常のレベルを上回っている。もちろん、健康にまったく影響がないレベル。いうか、仮に蓄積されて長期的に影響が出るのだとしたら、それなら過去、さんざん繰り返されてきた空気中核実験の方が、はるかに影響が大きいだろう。アメリカで、ロシアで、フランスなどは母国を離れた太平洋上で、そりゃもうドンパンドンパン実験を繰り返し続けた冷戦時代。今回の事象でも、新聞では「1都7県で過去最高の放射線量」などと報道しているが、新聞によってはちゃんと「近隣国で核実験があった時などを除き」なんて書いてある。もちろん右手で日本からODAもらいつつ、左手で核兵器や空母作ってる中国のことだけど、それはともかく、今日サザンビーチで一日中過ごしても、そんなもの被曝したとは言わない。
もろに被曝しているのは、福島の原発で懸命の作業をしている人々だ。12日、格納容器の圧力が高くなった1号炉のバルブを開けて容器の破損を回避させたベテラン作業員は、吐き気やだるさを訴えて病院へ搬送されたという。原子力施設で放射線の確定的影響を喰らった人間が出たと報道されたのは、東海村の臨界事故以来か。しかもJCOのときは、臨界を招いた作業員はその危険性を知らなかったわけだけど、今回は違う。危険性を十二分に理解した上で、バルブを回すために施設に入っていく。これは、たとえるならばパニック映画でヒーローがよくやる、「オレが行く」ってヤツである。そしてこれは映画ではない。ハンパじゃない怖さだろうし、それを乗り越える強靱な使命感があったに違いない。放射線宿酔になっちゃうんだから、1Gyを超える被曝だろう。症状が重篤にならないことを祈らずにいられない。もちろん現場で恐怖を押さえつけながら、事故と戦い続けるすべての人々の安全と、一刻も早い事態の収束も。